先日は初心者に向けてMCバトルの魅力を解説しましたが、今回はいよいよ普通にバトルを見て楽しんでみましょう!
※なるべくバトルの展開が分かりやすく、良質なバトル内容のものを選んでおります。

では早速見てみましょう。


ライムの連打を強烈なアンサーで打ち返す!
勝者:呂布カルマ (審査員による判定:4対1)

2017年の半ば、フリースタイルダンジョンにチャレンジャーとして登場した呂布カルマ。
独特なワードチョイスやあえて韻を踏みにいかないスタイルが人気を博し、バトルシーンでカリスマ的な人気を誇っていました。
先日の「パンチライン」を説明した記事
”これがボクシングならありえねえ 言葉のウエイトに差がありすぎる”
というパンチラインを決めたラッパーです。

その呂布カルマに対するは、当時のフリースタイルダンジョンの最年少モンスターを務めていたT-PABLOW。
元不良グループのリーダーでありながらHIP-HOPに目覚め、第1回高校生RAP選手権で優勝を果たしています。

この試合の見所は、何といっても呂布カルマの強烈なアンサー力。

先行のT-PABLOWが1バース目に
キャラクター生き様ガラクタ分かるかかますさ生唾ナマクラ
とライムを連打すれば、後攻の呂布は、T-PABLOWが出した生き様というフレーズを取って
”生き様? なんだお前 不器用だっただけだろうが
犯罪歴 貧乏 一つも理由になんねぇ 俺は真っ直ぐやってるだけだぜ”
と元不良のT-PABLOWに突き刺さるアンサーを返す。

T-PABLOWが2バース目に
吐いてく
大切対決歳月解決ハイテクアイテムマイペース愛せるI REP
と更にライムを連打すると、呂布はT-PABLOWの1バース目の"言葉の重みなんかあっか?"を引き合いに出し、
”俺相手に言葉の重みとか語った奴が 安い韻ばっか踏んでんな”
とアンサーし、カウンターパンチを決める。

ライムの攻撃は効かないと分かった
T-PABLOWは3バース目、
”12コ下の9歳に向かって 「お前言葉の重みがねぇから」とか言わねぇから”
とディスるが、呂布は
”12コ下だから何だよ ここに立ったら年齢なんて関係ねぇ”
と完璧なアンサーを返す。

このバトル、ライムという点に関しては間違いなくT-PABLOWが上回っていました。
ただ、そのライムした内容に対し呂布のアンサーがあまりにも的確であったため呂布の勝利となりました。
ラップバトルはこのように、あるスキルが優れていても別のスキルが上回り勝負が決まってしまうことがあります。
こういうところがゲームの対戦のようで、見ていて面白いのです!


アンサーVSライムのスタイルウォーズ!
勝者:NAIKA MC (審査員による判定:3対2)

全く異なるバトルスタイルの二人が戦うバトルのことをスタイルウォーズと言います。
上の動画はそのスタイルウォーズの代表格となるようなバトルです。

先行のFORKは2006年のUMB優勝者。ICE BAHNのメンバーで、ライムすることを徹底した「押韻主義」を貫くスタイル。
後攻のNAIKA MCは2016年のUMB優勝者。ライムにはこだわらず、相手が言ったことに対して必ずアンサーするスタイル。

FORKのラップをよく聴いてみると、1つの文脈に必ず1つ以上のライムが散りばめられていることが分かります。1バース目の最後は
下がれチャレンジャー(aeaena壁じゃねんだ(aeaena)
と意味を通して6文字のライムを決めます。それに対しNAIKAは
”壁だと思った事 一度だってねぇけど”
とカウンターパンチ。その後は韻にこだわるFORKのスタイルを真っ向から否定していきます。

これに対しFORKは
”韻だけってのは 俺にとって褒め言葉(ooa)
寿司屋で寿司しかねぇって言ってるのと同じことだ(ooa)

とライムしながらアンサーを返すのです。しかしNAIKAはこれに
”お前じゃなくてハンバーグが食いたいな 焼いて じゅう~”
とユーモア溢れるアンサーで会場を沸かせます。

3バース目のFORK、
"お前のスタイルが王道になっちまうんだったら 今後バトルの熱は相当冷める(ououaeu)
それが正義だっていうHIP HOPシーンなら 俺は抜いた刀をそっと収める(ououaeu)よ"

と、韻を踏まないNAIKAのスタイルを真っ向から否定しつつライムします。神業。それに対しNAIKAは
”そっと収めて帰れよ じゃあ”
とシンプルに反論し相手の主張を完封します。

もはやバトルで勝敗を付けてしまうのがもったいないくらい、どちらのスタイルも最高に格好良いバトルです。
あなたは、どちらのラッパーが勝ったと思いましたか?


二人のラッパーの生き様が滲み出たバトル
勝者:DARTHREIDER (審査員による判定:5対0)

MCバトルはステージの上が全てではありません。
戦っている二人のラッパーの関係性や、互いのラッパーがどんな人生を歩んできたかという「ステージの外」の部分を知っていると、よりバトルを楽しむことが出来ます。

このバトルの背景を伝えておくと…。
先行の崇勲は2015年のKOK(各大会の優勝者を集めたMCバトルの大会)の優勝者です。
後攻のDARTHREIDERは、そのKOKの主催者の一人です。
KOKで優勝する前はラッパーとして全く芽が出ていなかった崇勲にとって、KOKの主催者であるDARTHREIDERは恩人のような存在でした。

そのDARTHREIDERは左目に眼帯をしていますが、これは飾りではありません。
2010年に発症した脳梗塞による後遺症で左目を失明しているために付けているものです。
その後、2017年に医師から余命が5年であることを伝えられます。
そのDARTHREIDERがフリースタイルダンジョンにチャレンジャーとして登場しました。
崇勲とのROUND1のバトルを4:1で制し、続くROUND2のバトルが上の動画になります。

1バース目、先行の崇勲は追い詰められながらも即興で言葉を紡いだためか、恩人であるDARTHREIDERに対して”病人”というフレーズを出してしまいます。
DARTHREIDERはこれに
”病気を差別 病気を区別(ueu) そういう奴らに向かってマイクを向ける(ueu)
とアンサー。

2バース目の崇勲、押されている状況をなんとか取り戻そうと、苦し紛れに、けれどもバトルでなかったら絶対に言いたくないであろう
”心配されるのが嫌か じゃあ死んでくれ”
という真っ向のディスをぶつけます。
これに対しDARTHREIDERは自分の倫理観を主張し、正論で相手のディスをかわします。

3バース目。
ここで崇勲は、姉が自殺しているという驚きの告白をするのです(今までメディアで姉の死
に言及したことはありませんでした)。そして、
”見てくれてるかな 天国の姉ちゃん 崇勲は今ここで頑張ってんだ”
と亡き姉にメッセージを送ります。
「命」の重さは誰よりも分かっているけれど、HIPHOPのステージで戦う一人のラッパーとして、”死んでくれ”と、もう一度愛をこめて相手に言い放つのです。その言葉は、2バース目に発したときよりも遥かに重く聴こえました。

これに対しDARTHREIDERは、収録の数日前にニュースになっていた線路に飛び込み自殺をした少女に言及し、
”あのときに飛び込んだ青森の少女にも伝えたかったよ このHIP HOPの楽しさを”
とラップし、そこから全国の視聴者に向けてメッセージを送るのです。そして
”こんな俺だって こんなこいつだって 楽しく生きれる人生 HIP HOPに幸あれ”
と締めます。

病人の自分でもステージに立てばそれさえも武器にしてラップすることが出来る、今まで何も芽が出ていなかった崇勲でもMCバトルの大会で優勝すれば自分の存在を認めてもらえる。
HIPHOPに救われた二人のラッパーが対峙したことで、観客も視聴者も思わず胸を熱くしてしまう名勝負になりました。


このように、MCバトルは見れば見るほど見所が見つかるので、YOUTUBEなどで見ていくことをオススメします!

それでは!