カピバラ
今回のゲストはとりおやこさんです。
とりおやこさんはスピード指数の重要性を理解した上で、自身の「ひらめき」を大切にした予想をしている素晴らしい“ケイバ人”です。
今回はプロを目指した経緯や競馬予想に対する考え方まで話していきます。

これは2015年5月に競馬ナンデで行われたチャット対談を編集し、まとめたものです。
とりおやこさんは、「とりおやこ式 「たのしく、マジメに」」 のブログ主です。


挨拶

カピバラ
まず来ていただきありがとうございます。

とりおやこ
いえいえ、こんな機会滅多にないですから。

カピバラ
時間的に余裕が無いのでいきなりポツポツと質問していきます。

とりおやこ
お願いします。


スピード指数に対するスタンス 

カピバラ
まず、私はとりおやこさんがスピード指数を全て公開していることが凄いと思います。

カピバラ
「スピード指数を公開してやろう!」みたいな経緯があったのですか?

とりおやこ
そうですか?たぶん、スピード指数に対するスタンスの問題だと思います。どうせ指数だけあっても勝てないですからね。

カピバラ
そうなんですよね。スピード指数だけでは勝てません。

とりおやこ
指数を公開しようと思ったのは、指数なんて計算すりゃ出せるんだからタダで見せりゃいいじゃないかと思ったからです。

カピバラ
前にコラソンさん(勝手に名前を出してすみません)がとりおやこさんのことを「確信犯。指数を主眼に置きながらも、競馬の真実はそこだけではない事を経験則によって思い知らされていて、その部分をオブラートに包みながら、うまく予想をまとめる天才です。」と紹介していました。これ、かなり的を得ていると思います。

とりおやこ
コラソンさんがそんなこと言ってたんですか。でも、真実がそこにないってのはそのとおりで、それを気づいてもらいたいと思っているのも確かです。

カピバラ
かなり前にコラソンさんのブログのコメントでありました。

とりおやこ
そうなんですか。自分は読んでませんでした。嬉しいです。

カピバラ
スピード指数の大切さを理解すればするほど、普通ならそっちに流れてしまうじゃないですか。それをとりおやこさんは指数の大切さを理解した上でひらめきとか直感を上手く調和させているように感じます。

カピバラ
私も恥ずかしながら、一時期「指数」と「ラップ」しか見ていない時期がありまして、その時の成績はかなりひどかったです。とりおやこさんもそういう経験はされましたか?

とりおやこ
ありましたよ。機械的に買ってみた時期もありました。でも、指数どおりに買いたくないときが必ずあって、しかも指数どおりじゃない方があたるんです。

とりおやこ
そういうのがあって、やっぱり感覚を信じたいなというのが強くありました。


答えはいつも自分の中に

カピバラ
とりおやこさんは以前、「楽しんでる時の方が成績が良い」「考えすぎていない時の方が成績が良い」という記事も書いていましたよね?(ニュアンス違ったらすみません)

とりおやこ
大体合ってます。楽しんでるときは考えがよくめぐるので成績がいいし、いくら考えても答えが出ないようなときは成績が悪い。これはそもそも答えを持っていないからだと思います。

カピバラ
ああ!確かにそうですね。答えを持っていないから考えすぎるんです。

とりおやこ
答えは外にある情報の中から探し出すものだと思ってる人がいるかも知れないですけど、答えはいつも自分の中にあって、それを見つけるだけなんです。

カピバラ
競馬予想は客観の作業のようで、自分自身による選択ですからね。

カピバラ
とりおやこさんはG1レースは予想前にデータを予習しますよね。その時の切り口はどのように見つけていますか?

とりおやこ
基本は過去データですが、データの取り方は、「こういうのがいいんじゃないか」というのがスタートになっていると思います。

カピバラ
その記事は何度も拝見させていただいています。私の印象としては、「人と違う視点を」的なデータを重視するイメージですが、意識されていますか?

とりおやこ
意識してますね。いくら傾向に合っているデータでも、みんながそれに乗ればダメなので、そういうデータは使いません。

とりおやこ
よく言うのは「枠」です。枠の有利不利って間違いなくあるんですけど、みんながこぞって言うほどではないので、声が上がるようながむしろ気にしないでいます。

カピバラ
桜花賞でも指摘されていましたよね。須田鷹雄さんも「誰もが分かるマイナスはもはやマイナスではない」と回収率についてどこかで話していたと思います。

カピバラ
「外枠不利」と皆が言えば当然オッズにも現れて、外枠の馬が不人気になりますから、回収率ベースで言えば外枠不利とは言えないのですよね。


他の予想家について

カピバラ
ちなみにとりおやこさんが尊敬していたり、参考にしたりする予想家はいますか?

とりおやこ
今名前の上がった須田さんは基本的な考えが共感できます。

とりおやこ
有名な方ではあと亀谷さんくらいかな?考え方は全く違いますが。

とりおやこ
むしろ、小倉の馬券師Tさんとかコラソンさんとかみたいな方の方がずっと上手いし、すごいなと思います。ただ、他の方の予想を参考にすることはないですね。

カピバラ
亀谷さんと考え方が違うというのはどの辺りですか?難しい質問ですみません。

とりおやこ
亀谷さんは、視点の斬新さに驚くんです。「根幹・非根幹」とか言う人はいなかったですから。

カピバラ
良い意味で考えが違うということですね?

カピバラ
根幹非根幹という発想にしても、データの引き出し方・見せ方が上手いですよね。亀谷さん。

とりおやこ
そうですね。自分の予想は、回収率を気にする須田派だと思いますが、亀谷さんの「亀谷さんが良いと感じることを予想に落としこむ力」はすごいと思います。予想そのものは取り入れようと思いませんが。


目の前のレースは何かを感じ取らなければいけない場でもある

カピバラ
なるほど。そういえばあまり血統は参考にされませんよね?

とりおやこ
最近は割と血統についても書きますが、かなり薄っぺらいです。血統も含めて「感じたこと」をうまく消化できればいいなと思っています。

カピバラ
その消化が難しいですよね。自分が見つけたことをダイレクトにそのまま予想にしちゃうのも、なんか違うじゃないですか。落とし込み方というか、上手い消化の仕方は予想に余裕と経験が無いとなかなか難しいですよね。

とりおやこ
経験は大事ですね。競馬には色々な要素がありますけど、それらを消化するためには経験が必須です。経験の中から、良い・悪いを感じていって、予想に繋げるんだと思います。

とりおやこ
余裕というのは、たぶん目の前のレースを当てにいくかどうかということですよね。レースは当てるために買うけれども、一方で、これからのレースのために何かを感じ取らなければいけない場でもありますから、当たることだけが正解ではないです。その意味で、余裕は必要だと思います。

カピバラ
やっぱり競馬は長く楽しむものですから、目の前のレースで起きたことが目の前のレース以上に意味を持ってきて、今後に繋がりますよね。それに、何が何でも的中させるという訳でもなく、最終的な回収率を良くしていけばいいのですから、そういった意味での余裕は持っておくと良いですね。


キーレース・ベストレース

カピバラ
スピード指数で、同じレースで高指数を何頭も出して、その次のレースで好走しまくれば、そのレースは「キーレース」と言ったりするじゃないですか。あれは予想する側の人間にも当てはまりますよね。

とりおやこ
それは「何か感じるものがあったレース」こそがキーレースということでしょうか。

カピバラ
目の前の1レースが、今後何年かの予想に影響したりすれば、それはその人にとっての「キーレース」という感じで。

カピバラ
>>「何か感じるものがあったレース」 そうですね。とりおやこさんがベストレースを1年に1レース選ぶのも、感性とか、予想の指針とかが現れていて凄く面白いです。

(参考記事:とりおやこ式「たのしく、マジメに」 カテゴリ「ベストレース」) 

とりおやこ
次走では特に使わなかったけれども、10年後とかに「ああ、あんな馬がいたなあ」というのが急に浮かんだりするし、そういう思い出しをいつも待ち望んでいます。

とりおやこ
ベストレースに触れていただけるとは思わなかったですw でも、感じるものを大事にしているので、あれは大事にしています。

カピバラ
ベストレースの話が出たので続けますと、とりおやこさんはフェノーメノが勝った3歳500万下をベストレースに選びましたよね。その感覚、私はかなり共感しています。

とりおやこ
マジですか。いつも「伝わらないかなー」とか思って書いているので、伝わって嬉しいです。どの辺に共感できました?

カピバラ
スピード指数の凄さの片鱗を見る感じといいますか、「誰も注目してなかったけどこんなすごいことがあったんだよ!」という感じといいますか...

とりおやこ
出世前に強さを感じることができるのはスピード指数の醍醐味ですよね。

とりおやこ
あと、あのレースに関して言えば、そのレースとその後のレースが線で結ばれる感覚も大事だったと思います。

カピバラ
そうですね。あのレースからフェノーメノとスピルバーグはかなり活躍しましたし、ストローハットもダートで強い所を見せました。


プロを目指した経緯 

カピバラ
次の質問はプロを目指した経緯なんかを聞きたいと思っています。いいでしょうか?

とりおやこ
どうぞ。

とりおやこ
こちらから話した方がいいですね。

カピバラ
まず、プロを目指したきっかけなどを話していただければと思います。

カピバラ
そうですね。とりおやこさんからいろいろと話していただけるとありがたいです。

とりおやこ
真剣に予想をやってる者なら誰でもそう思うと思うんですけど、「オレはこんなにすごいんだぜ!」と言いたいし、「すごいなあ」と思われたいと思うんです。要は認められたいってことですかね。

とりおやこ
競馬で食って行きたいとかそこまで考えてないですけど、とにかく認められたいと思ってて、そういうところに、競馬雑誌「競馬最強の法則」での予想法募集があって、それに応募したのが最初じゃないかと思います。

カピバラ
「競馬予想が上手い」って凄いことですもんね。で、凄いことの割に称賛されない。この辺りのジレンマもありましたか?

とりおやこ
今考えると、当時は凄くも何ともないんですけど、少なくともメディアに出ている人よりは「予想が分かってる」と思ってて、それより上なのに何者でもないということにはジレンマを感じてました。

とりおやこ
今でもすごくはないですが。

カピバラ
いや、すごいと思います。


「その人の話を聴きたい!」と思わせる何か

カピバラ
というか、「すごい」って何なんでしょうね?的中率とか回収率とか、そういう成績もひとつの指標なんですけど、それだけじゃない評価が競馬予想にはありますよね?

とりおやこ
回収率だけなら、たぶん大体の「プロ」よりは上なんでしょうけど、プロとしては、その人にしかない魅力とか、「その人の話を聴きたい!」と思わせる何かが必要なんだと思います。長いことやってるのに、まったく芽がでないあたり、惹きつける魅力はないと思います。

カピバラ
それは謙遜されすぎでは。世の中のプロって、こういう言い方をしたらアレですけど、自分を特別な存在に見せてる節があるじゃないですか。いわゆる脚色ですね。自己プロデュースが上手いという言い方でもいいかもしれません。

カピバラ
そういった「自分を魅力的に見せる仕掛け」を意図してか意図せずかは分かりませんけど、その差が意外とプロとアマの差を大きくさせているのではないかと思います。だから、とりおやこさんが芽が出ないとか、惹きつける魅力が無いというのは、何か違うと思います。

カピバラ
それに、少なくとも私は毎週とりおやこさんのブログを読みますから、『「その人の話を聴きたい!」と思わせる何か』をとりおやこさんは持っていると思います。

とりおやこ
その割にはブログのお客さんは増えませんけどね。カピバラさん、私をプロデュースしてくださいよ(笑)

カピバラ
私自身そんなにうまくないですよ(笑)

とりおやこ
ただ、自分はそんなに脚色とかしたくなくて、いつも、当たり前のことを「これが当たり前ですよ」と言いたいんです。だからあまり目立たないんだと思います。そこに価値を感じてもらいたいんですが中々...

カピバラ
とりおやこさんのブログって、自然体だと思います。競馬予想特有のギラギラも無いし、圧倒的なカラーで押していく感じでも無いし。でもその自然体を好きな人は結構いますよ。

とりおやこ
自分、ギラギラするとダメなんです。かつて「勝者」として振る舞うことを試してみたんですけど、「勝者」になろうとすると決まって勝てなくなるので、もう勝者になろうとすることは辞めたし、予想単体でも勝とうとするのはやめました。

カピバラ
とりおやこさんのブログに「スピード指数研究」っていうカテゴリがあるじゃないですか。アレ、めちゃくちゃ高度なことをしようとしてますよね。あの知的探究心というか、論理と計算の上に沸き起こるワクワク感は、とりおやこさんのカラーなのかなとも私は思います。

カピバラ
>> 「勝者」になろうとすると決まって勝てなくなる 不思議ですよね。人の上に立つことを意識すると、競馬予想が見えない何かに囚われるのでしょうかね。

とりおやこ
自分は研究者基質とか職人基質が強い思います。要は、勝つとか負けるとかじゃなく、研究したりして過ごしていたいし、そういう自分を誰かに飼ってもらいたい。

とりおやこ
勝ちを意識すると勝てなくなるのは、「勝つ」ということは予想の中で考えなくていいことだからだと思います。

カピバラ
とりおやこさんは、「知る人ぞ知る」ポジションなのかもしれませんね。現在は。

とりおやこ
そんなに難しいことは言ってないし、知ってもいないですがね。


勝てない以上に、このままやっててもつまんないなって

カピバラ
ちなみに、とりおやこさんのブログはどんな人が多く読んでいる感じがします?

とりおやこ
それがよく分からないんですw たぶん、半分くらいはスピード指数を使ってる人かなあという気はしますが。

とりおやこ
特定の層に向けてはいないんですが。

カピバラ
スピード指数知りたての競馬ファンにとって、とりおやこさんの予想の切り口はかなり良いスパイスになりそうな気がします。スピード指数に向き過ぎて埋没するリスクを、とりおやこさんの記事を見ることで軽減されるような感じが有ります。

とりおやこ
あー、でもそういう時期って自分も経験してるんですけど、その時期は何言っても聞かない人が多いですねー。

カピバラ
あーそうですねw

とりおやこ
結局自分で気づくしかないと思ってます。

とりおやこ
そういう時期が過ぎて、やっぱり勝てないわってなったときに、競馬はつまんないってならないことを祈ってるし、そうならないために「とにかく楽しもうぜ!」っていつも言ってます。

カピバラ
とりおやこさんは勝てなくなった時に自分で気付いたんですか?

とりおやこ
勝てない以上に、このままやっててもつまんないなって思いました。

カピバラ
確かにつまんないですよね。数字だけ見てるのって。

カピバラ
数字見るのは嫌いでもないんですけどね(笑)

とりおやこ
数字だけ見てるのがつまんないというよりは、勝つ勝たないだけの話に収束することとか、自分の考えをつぶしちゃうのがつまんないんです。

カピバラ
ですね。自分の考えは唯一無二ですから、それを無くすのはもったいないです。

カピバラ
三秋縋という作家がツイッターでこんなことを言ってました。『「良質な謎を提供し続ける」こと。それはつまり、こっち(読者)にも考えさせてくれる、ってことです。たとえ予想が外れていたとしても、自分で考えた内容やその思考過程は、頭に残るんですよ。それって限りなく唯一無二なものなんですよね。そういう物をこっちに作らせてくれる物語ってのは、すごい。』


カピバラ
これ、三秋さん自身は作品について話してるんですけど、このコメントを見た時、真っ先に競馬の魅力と同じだと気付きました。唯一無二の経験をさせてくれるのが競馬予想で、だからドラマ性を強めてくれるのだと。

とりおやこ
うんうん。競馬を勝つ勝たないだけのものにするのはもったいないです。